かかりつけ薬剤師は「加算要件」ではないのでは?

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昨日、1月27日に中医協総会に出された「個別改定項目について(その1)」(PDFはこちら)の中の、かかりつけ薬剤師制度には驚きましたね!
「かかりつけ薬剤師」に対しての加算は2種類あり、個別の患者さんに対する「かかりつけ薬剤師指導料」と、医科の地域包括診療料・加算が算定されている患者さんに対する「かかりつけ薬剤師包括管理料」に分けられています。

● 個別改定項目におけるかかりつけ薬剤師関連抜粋

(新) かかりつけ薬剤師指導料 ○点
[算定要件]
(1) 患者の同意の上、かかりつけ薬剤師として服薬指導等の業務を実施した場合に算定する。
(2) 患者の同意については、患者が選択した保険薬剤師をかかりつけ薬剤師とすることの同意を得ることとし、当該患者の署名付きの同意書を作成した上で保管し、当該患者の薬剤服用歴にその旨を記載する。なお、患者の服用薬について、一元的・継続的な管理を推進する観点から患者1人に対して、1 人の保険薬剤師のみがかかりつけ薬剤師として算定できる。
(3) 当該指導料は、患者の同意を得た後の次の来局時以降に算定可能とする。
(4) 当該指導料を算定する保険薬剤師は、以下の要件を満たしている旨を地方厚生局長等に届け出ていること。
① 薬剤師として◯年以上の薬局勤務経験があり、同一の保険薬局に週◯時間以上勤務しているとともに、当該保険薬局に◯年以上在籍していること。
② 薬剤師認定制度認証機構が認証している研修認定制度等の研修認定を取得していること。
③ 医療に係る地域活動の取組に参画していること。(地域の行政機関や関係団体等が主催する講演会、研修会等への参加、講演等の実績)
(5) 他の保険薬局及び保険医療機関においても、患者が選択したかかりつけ薬剤師の情報を確認できるよう、手帳等にかかりつけ薬剤師の氏名、勤務先の保険薬局の名称を記載すること。
(6) 患者に対する服薬指導等の業務はかかりつけ薬剤師が行うことを原則とする。かかりつけ薬剤師以外の保険薬剤師が服薬指導等を行った場合は当該指導料を算定できない。
(7) かかりつけ薬剤師は、担当患者に対して、以下の業務を行っていること。
① 薬剤服用歴管理指導料に係る業務を実施した上で患者の理解に応じた適切な服薬指導等を行うこと。
② 患者が服用中の薬剤等について、患者を含めた関係者が一元的、継続的に確認できるよう、患者の意向を確認した上で手帳を用いて当該指導等の内容を記載すること。
③ 患者が受診している全ての保険医療機関の情報を把握し、服用している処方薬をはじめ、要指導医薬品及び一般用医薬品(以下「要指導医薬品等」という。)並びに健康食品等について全て把握するとともに、その
内容を薬剤服用歴に記載すること。また、当該患者に対して、保険医療機関を受診する場合や他の保険薬局で調剤を受ける場合には、かかりつけ薬剤師を有している旨を明示するよう説明すること。
④ 患者から 24 時間相談に応じる体制をとり、開局時間外の連絡先を伝えるとともに、勤務表を作成して患者に渡すこと。ただし、やむを得ない事由により、かかりつけ薬剤師が開局時間外の問い合わせに応じること
ができない場合には、あらかじめ患者に対して当該薬局の別の薬剤師が開局時間外の相談等に対応する場合があることを説明するとともに、当該薬剤師の連絡先を患者に伝えることにより、別の薬剤師が対応しても
差し支えない。
⑤ 患者が他の薬局で調剤を受けた場合は、その服用薬等の情報を入手し、薬剤服用歴の記録に記載すること。
⑥ 調剤後も患者の服薬状況の把握、指導等を行い、その内容を薬剤を処方した保険医にその内容を情報提供し、必要に応じて処方提案すること。
服薬状況の把握の方法は、患者の容態や希望に応じて、定期的に連絡できるようにすること(電話による連絡、患家への訪問、患者の来局時など)。また、服薬期間中に服用中の薬剤に係る重要な情報を知ったときは、患者又はその家族等に対し当該情報を提供し、患者への指導等の内容及び情報提供した内容については薬剤服用歴の記録に記載すること。
⑦ 継続的な薬学的管理のため、患者に対して、服用中の薬剤等を保険薬局に持参する動機付けのために薬剤等を入れる袋(いわゆるブラウンバッグ)を必要に応じて配布し、その取組の意義等を説明すること。また、
患者が薬剤等を持参した場合は服用薬の整理等の薬学的管理を行うこととするが、必要に応じて患家を訪問して服用薬の整理等を行うこと。
(8) 薬剤服用歴管理指導料、かかりつけ薬剤師包括管理料又は在宅患者訪問薬剤管理指導料(当該患者の薬学的管理指導計画に係る疾病と別の疾病又は負傷に係る臨時の投薬が行われた場合を除く。)と同時に算定できないこと。

(新) かかりつけ薬剤師包括管理料 ○点
[包括範囲]
下記以外は包括とする。
(1) 時間外等加算、夜間・休日等加算、(2) 在宅医療に係る点数、(3) 薬剤料、(4) 特定保険医療材料料
[算定要件]
(1) 対象患者は地域包括診療料、地域包括診療加算等の算定対象患者とする。
(2) 患者の服薬状況等については、薬学的知見に基づき随時把握して、保険医に対して、その都度情報提供するとともに、必要に応じて減薬等の処方提案を実施すること。
なお、情報提供の要否、方法、頻度等については、あらかじめ保険医と相談して合意が得られている場合は、当該合意に基づいた方法等によることで差し支えないこと。
(3) 「かかりつけ薬剤師指導料」の算定要件の(1)~(7)を満たしていること。
(4) 薬剤服用歴管理指導料、かかりつけ薬剤師指導料又は在宅患者訪問薬剤管理指導料(臨時の投薬が行われた場合を除く。)と同時に算定できないこと。

● かかりつけ薬剤師加算にブーイング多数(笑)

さて、昨日の発表以降「こんな制度は薬剤師の負担が増えるだけ」「考えたヤツはアホ」と言った意見が多く見られました。
意見としては、
 ・24時間電話対応など、かかりつけ薬剤師を指定した患者さんと、そうでない患者さんとでは、サービスにほとんど差がないのに、指定した患者さんの方が高くなる
 ・患者さんがいつ来るか分からないのに、毎回かかりつけ薬剤師が対応するのは困難
 ・かかりつけ薬剤師に指定された薬剤師の患者さんが重なると、待ち時間が長くなる
 ・同一薬局に○年以上勤務など、薬剤師の異動に制約がありすぎる
 ・24時間電話対応の際の薬剤師の労働環境の整備に疑問
 ・数ヶ月先の勤務カレンダーは準備できない
などでしょうか。
確かにもっともです(笑)
また、今回の改定案では調剤基本料は、次の項目などを条件に調剤基本料1~5の5段階に分けられ、さらに妥結率も加味されています。
(1)同一法人グループ内の処方せん回数が数十万回を超える法人グループ(分社化含む)
(2)特定の医療機関からの処方せんの集中率が高い
(3)特定の保険医療機関と不動産の賃貸関係がある(医療モールなど)
(4)「かかりつけ薬剤師」として一定の実績のある薬局は減算条件から除外

● かかりつけ薬剤師制度は「加算要件」ではないのでは?

さて、ここからはボクの推測というか、こういう見方もできるのでは?ということです。
まず、元々の厚労省のテーマ(というか、薬局・薬剤師を取り巻く問題)を考えてみますと、キーワードは
「大型チェーン門前薬局をぶっ壊せ!!」
でした。
ボクの推測なのですが、「かかりつけ薬剤師制度」は「『加算要件』ではなく、『免減算要件』なのではないか?」ということです。
つまり、厚労省のロードマップ上には、先の「大型チェーン解体」という大きな意志があり、まず
「門前薬局はこれから儲かりませんよ。真面目に患者さんと向き合う意志のない薬局以外はご退去願います。」
という意志を示そう、ということなのではないでしょうか。
中医協の中でも、加算点数については
「かかりつけ薬剤師指導料については、普及させることを第一にやっていくべき。小さく生んで大きく育てる意味からもあまり高い点数は付けないことを希望」幸野委員(健保連理事)
という意見も出ているようです。(支払側なので、当然と言えば当然ですが)
「かかりつけ薬剤師としての算定要件のハードルが非常に高い」ということは、それだけ人とコストの負担が経営者に回る、ということです。そこにつく報酬が見合わないものであれば、加算を諦めるのが経営者です。
(もちろん、「かかりつけ薬剤師」ということ自体はとても大切ですし、もっと評価されるべきだと思います。)
前回の診療報酬改定から医科向けには「地域包括診療料」「地域包括診療加算」が設定されていますが、平成27年7月で、診療料は93施設、診療加算は4713施設にとどまっています。
病院・診療所数は、約11万施設ですので、約4%と非常に低い算定率です。
今回の改定で、算定条件を拡大する案が出ているため、来年度以降はやや増加するとは思いますが、1%にはならないのではないでしょうか。
ボクの予想では、厚労省の「かかりつけ薬剤師」の算定率も、こうした医科の算定率との兼ね合いも含めて、ベタ取りができる条件にはしてこないのではないか、と思います。
つまり、苦労してかかりつけ薬剤師加算を算定するまでの「うま味」は、いわゆる「大型チェーン」以外にはほとんどない、と。
そして、「大型チェーン」にとっては、大きな収入の柱である「調剤基本料」の減算を免れるために「かかりつけ薬剤師」を取るのか、撤退してもらうのか、という選択を突きつける準備ではないのか?と…。
これから4月までの間、かかりつけ薬剤師制度をめぐって、いろんな議論がなされるでしょう。
ひょっとしたら、大型チェーンが無くなるまで(もしくは、ほとんどが大型チェーンに飲み込まれるまで)、超・超・超氷河期がくるのかもしれません。
適正な労働・スキルに見合った、適正な報酬分配が行われる方向に議論が進むよう、声を上げるべきところでは声を上げ、頑張っていきましょう!!
(※1/28 15:15 タイトル修正、※2/8 18:00 「地域包括診療加算」算定率修正)

コメント

  1. あぶさん より:

    始めまして
    想像を絶する算定要件ですね・・・
    薬局とまじめに向き合ってくれる患者ほど高くなり、全部いらない!とにかく早く!という患者ほど安くなるのをなんとかして欲しいのですが、今回もそれは変わりそうにないですね

  2. まきのり より:

    あぶさん、コメントありがとうございます!
    (1)患者さんの「薬局」や「医薬分業」に対するニーズ
    (2)提供する薬剤師の気持ち(処方への疑問・副作用・相互作用、薬剤師の地位)
    (3)薬局経営サイドの「利益」へのこだわり
    (4)財務省・厚労省からの「医療資源適正化」
    という4者の思惑が入り乱れている中での、今回の改定案のため、議論がごちゃごちゃですね…(^_^;)
    薬剤師同士でも、「この算定要件はおかしい!」としながらも、じゃあ、どこがおかしいのか、という点では論点が少しずつズレていると思います。
    本来であれば、薬剤師会がしっかりリーダーシップを発揮して、譲る部分は譲る、守る部分は守る、ということをしてくれれば良いのですが、求心力はありませんよね。
    まずは、こうした問題意識を持ったボクたち薬剤師がなんとかして、ムーブメントを起こせないだろうか、ということは常々考えるところです。
    是非、あぶさんも諦めずに、頑張っていきましょう!
    また気になることがありましたら、是非コメントお寄せください。
    よろしくお願いします(^o^)

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  4. テツヤン より:

    はじめまして、気になっていたのでコメントさせて頂きました。病院・診療所数11万施設に対して診療加算数4713施設なら4%ではありませんか? 間違いであれば申し訳ありません。

  5. まきのり より:

    テツヤンさま
    ご指摘、ありがとうございます!
    ご指摘の通りです。早速修正させていただきました!
    また気になる点などありましたら、ご意見、ご指摘等よろしくお願いします。

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