電子版お薬手帳への一抹の不安

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連日のように中医協での平成28年診療報酬改定、調剤報酬改定の議論がニュースとなっています。
調剤報酬改定の中で1つ、ほぼ導入が認められるだろうと言われているのが「電子版お薬手帳」です。
現行の調剤報酬点数表(平成26年改定)では、紙媒体のお薬手帳に記録をした場合しか、薬剤服用歴管理指導料・41点を加算することは出来ませんでした。
ちなみに、あちこちを調べてみたのですが、お薬手帳あり(41点)/なし(34点)の算定率についてのデータが見つからないので、ウチの薬局での比率などから想定すると「だいたい60~65%くらいなんではないかな?」と勝手に予想しています。
このお薬手帳あり(41点)/なし(34点)が、28年の調剤報酬改定ではひっくり返るのでは?とも議論されており(過去記事 お薬手帳の考え方②~平成26年度調剤報酬改定を受けて を読んでくれたのかもしれませんね!)、「お薬手帳持参率が上がること=加点に繋がること」とはならない可能性もありますが、薬剤師からすれば、患者さんにお薬手帳や薬剤師の有用性を感じていただけるのなら本望です!(経営者としては苦々しいのかもしれませんが)
さて、話を戻すと、平成28年改定では「電子版お薬手帳に記載した場合も、紙のお薬手帳に記載した場合と同じ扱いになる」(=それが「加点」なのか「減点」なのかは未定)になるということですね。
電子版お薬手帳はすでに運用が始まっているサービスがかなりあって、
 ・eお薬手帳(日本薬剤師会)
 ・大阪e-お薬手帳(大阪府薬剤師会)
 ・harmo(ハルモ)(川崎市薬剤師会、ソニー)
 ・NPhA 電子お薬手帳(日本保険薬局協会(NPhA))
など、メジャーなのだけでも全部で10種類上あると言われています。(薬局チェーン企業が自社で開発・運用しているものもありますね!)
電子版お薬手帳は、1.端末型(端末内でのみデータを保管)、2.サーバー型(特定サーバーでの運用)、3.クラウド型(クラウドサーバーでの運用)の3種に分けることができます。
現在、運用されているもののほんとんどはネットワークに繋がっており、その多くが3.クラウド型に分類されると思います。
そして、この数ヶ月で、各電子版お薬手帳の運用会社は厚生労働省主導のもとで、「共通フォーマット」の導入が予定されています。(QRコードが有力?)
では、ここから本題です。ウチの薬局では、まだ電子版お薬手帳を利用したことがないので、もうすでにこれらの懸念は技術的・業務的にクリアされているのかもしれませんが、潜在的リスクもあるかと思いますので、あえて記事にしたいと思います。
もし、「このリスクについては、もうクリアされているよ」ということがあれば、是非コメントをお寄せください!
ボクとしては、電子版お薬手帳を扱うことがとても大切だと思います。低年齢層ではかなり持参率も上がるかと思います。それでも、実際の運用面では大きな懸念材料が残されていると感じるのです。
1.今日の処方の記載/記載の確認は誰が行うのか?
 ・患者さんにQRコードを渡して入力してもらう
 ・非接触ICチップをかざして入力する
 ・患者さんがスマホで紙のお薬手帳を撮影して入力する
 ・患者さんが家に帰って、自宅で薬情などを見ながら自分で入力する
これらの入力の違いは、サービスやデバイスにより千差万別です。どのケースであっても薬剤師側が記録する場合と、患者さんが能動的に記録するケースあるわけで、「どの方法・タイミングなら加点(減点)」とする、と判断するのはなかなか難しいように感じます。
また、操作ミス等で記録モレになった場合の確認等は、どちらが行うのか?という点についても少し不安が残ります。
2.電子版お薬手帳は見せてもらえるのか?
この問題が1番大きいと思います!
確かに、記録をする部分ではQRコードや非接触ICチップが活躍するはずです。しかし、その肝心のスマホに記録されて情報を「確認するとき」にはどうでしょうか?
紙のお薬手帳では(患者さんに了解をもらってから)コピーなどをして、記録を残すこともありました。それが電子版お薬手帳は…
 (1)クラウドにアクセスして、履歴を読み取る
 (2)薬剤師がスマホを預かって、メモ用紙などに書き写す
というやや煩雑な方法になっていることが考えられます。
(1)クラウドにアクセスして、履歴を読み取る場合
例えば「日薬版 eお薬手帳」では、クラウドから過去の服用歴を引き出すためには患者さんの「ワンタイムパスワード」が必要になり、1時間のみ患者さんのデータにアクセスすることができます。
…これは、薬歴が投薬後にすぐに書ける場合、ということが前提のシステムです。
忙しくて、患者さんが立て続けに来てしまいうような場合、薬歴を書くまでに1時間を超えてしまうと、その情報にはアクセスすることができなくなってしまうのです。
しかも、患者さんは、運営会社との同意書を結んでいるため、薬局側が勝手にそのデータを印刷やデジタル保存する、という行為をすれば、契約違反となってしまう可能性があるのです。
また、クラウドサーバーへのアクセスについては、別の危険性があります。
各薬局のレセコン、電子薬歴システムは、インターネットに繋がっていますか?
薬局の対応としては、レセコン等のネットワークにファイヤーウォールを設けて、特定のサイトにしかつなげなかったり、普段はインターネットへの接続自体を中止しているという所が多いのではないか、と思います。
それは、薬歴データがインターネットを通じてウイルス等に感染したり、ネットワークを通じて漏洩することを恐れているからです。
しかし、電子版お薬手帳への記録に、インターネットへの接続が必須となれば、そのファイヤーウォールや接続にによる情報流出の可能性が(わずかかもしれませんが)上がることになるのです。
(2)薬剤師がスマホを預かって、メモ用紙などに書き写す
これは、自分がスマホを第3者に預ける立場に置き換えてみると、どれだけゾッとする状況か、簡単に想像がつくかと思います。
紙のお薬手帳には「そこには薬の服用履歴という重要なデータがあるが、薬剤師という薬の専門家に、そのデータを見せることで安心して薬が飲めるなら」と感じてもらえて、調剤室などで預かってゆっくり眺めても、ほとんどの患者さんには納得していただける行為だと思います。
ところが、スマートフォンはどうでしょうか?もちろん、薬剤服用歴は大変重要なデータですが、それ以上に「電話帳」「メール」「LINE」「SNS」「写真」「予定表」「おサイフケータイ」など、ありとあらゆる個人情報・機密情報のデパートなのです。
これを、目の前ならともかく、調剤室の影などに持って行かれてしまった日にはずっと気が気ではないはずです。
また、薬剤師としても、万一、誤操作により、個人情報へアクセスしてしまったり、データの破損などをしてしまった場合には、大きなトラブルへと発展することにもなりかねません。
さて、いつの世も、変革にはリスクがつきものです。
それぞれの電子版お薬手帳の良い所を整理して、後から「困った!」とならないように、これから導入を検討する薬局は4月までにしっかりと対応を整えてから電子版お薬手帳の運用に取りかかっていきましょう!!

コメント

  1. お薬手帳持参で薬代が安くなる?のは本当なのか?

    先日の診療報酬改定率決定から、少しずつ改定内容が具体的に落とし込まれてきましたね。 診療報酬改定率についても、別の記事で書きたいと思っているのですが、まずは「おくすり手帳」についてです。 今日の読売新聞の記事 お薬手帳、窓口負担引き下げへ…同じ薬局利用で…