青ロヒ/青サイの一抹の不安

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中間型睡眠薬「ロヒプノール」(中外)「サイレース」(エーザイ)の2つのフルニトラゼパム製剤に、錠剤のデザイン変更が予定されています。
●以下、中外のお知らせより(エーザイ・サイレースも同様です)

製剤変更内容
白色素錠から淡青色のフィルムコーティング錠(内核は青色)に変更
※用法・用量、効能・効果に変更はございません。
ご留意いただきたい点は次の通りです。
(1) 内核が青色に着色されています。
〈処方時患者さんへのご案内について〉
● 錠剤がごく薄い青色に変わっていますが、用法・用量、効能・効果に変更はないことをお伝えください。
● 青い斑点が現れることがあるため、高温多湿な場所での保存は避けてください。
● 口の中で溶かすと舌が青くなりますので、口に含んだらすぐに水で飲みこむようにお伝えください。もし舌が着色してしまっても害はありません。
● 濡れた手で触ったり、長く持っていると手が青くなることをお伝えください。手についた場合は石鹸等で洗えば落とせます。
〈調剤時の留意点〉
● 粉砕すると青くなります。
● 分割した場合は分包機の汚染や分包内で他剤に色移りすることがあります。
(2) 錠剤の径が大きくなっています。
フィルムコーティングを施しているため、錠剤の径と厚みが大きくなっています。

飲食物へのフルニトラゼパムの混入による、昏睡強盗・催眠暴行等への悪用防止のための変更、ということで大変評価できる変更だと思います!
厚労省からも、今回の変更に伴う通知が出されています。
と・こ・ろ・がっ!!
ちょっと、薬剤師の皆さん!!患者さん!!ちょっと不安に感じませんかexclamation&questionexclamation&questionexclamation&question
新しく青くなったサイレース/ロヒプノール「青サイ」「青ロヒ」って呼んでみましょう)って、本当に変更前のサイレース/ロヒプノールと一緒なんですか!?
どちらかの著名な薬学博士の先生は、こうおっしゃっています。
(ボクもたびたび借用させていただいていますが(笑)たらーっ(汗)たらーっ(汗)たらーっ(汗)
「先発品と後発医薬品は、確かに「有効主成分」は同一です。でも、添加剤や錠剤の固め方が違うので、効き目が違うこともあります。」

はい、どうしましょう!あせあせ(飛び散る汗)
つまり、先発品からジェネリックに変更した時に、効果が違うと感じるのは「主成分が同じでも、添加剤や製法が違うために、体内動態が異なるから」という考え方ですね。
先発メーカーさんを中心に、ジェネリックへのネガティブな意見展開でよく使われるフレーズだと思います。
では、今回の、ロヒプノール・サイレース(従来品)から、新ロヒプノール・新サイレースには、どんな変更が加えられているのでしょうか?

●従来品 サイレース(2mg)

 (サイレース添付文書より、ロヒプノールもほぼ同等)
 ・性状:白色 素錠(割線入り)
 ・外形:直径 9.1mm、厚さ 2.5mm、質量 200mg
 ・添加物:結晶セルロース、ステアリン酸マグネシウム、タルク、乳糖水和物
 

●変更品 サイレース(2mg)

 (サイレース添付文書より、ロヒプノールもほぼ同等)
 ・性状:淡青色 フィルムコーティング錠(割線入り)
 ・外形:直径 9.1mm、厚さ 3.4mm、質量 211.5mg
 ・添加物:青色1号、カルメロースカルシウム、ケイ酸カルシウム、結晶セルロース、酸化チタン、ステアリン酸マグネシウム、タルク、乳糖水和物、ヒプロメロース
silece.jpg
(エーザイのお知らせより)
さて、今回の変更にともなって、添加剤の種類が増えて、素錠→フィルムコーティング錠に変更なっていることがわかります。
そして、気になる体内動態ですが…

●従来品 サイレース(2mg)

 (サイレース添付文書・第9版(2010年9月)より、ロヒプノールも同値)
silece1984.jpg

●変更品 サイレース(2mg)

 (サイレース添付文書・第10版(2015年6月)より、ロヒプノールは未発表ですがおそらく同等と思われます)
silece2015.jpg
従来品の試験環境(1984年当時?)と、現在の試験環境は大きく異るため、一概に比較はできませんが、
 ・最高血中濃度到達時間(Tmax):従来品 1.3hr → 変更品 0.75hr(0.5hr ~ 6hr)
 ・半減期(T1/2):従来品 6.8hr ± 0.6hr → 変更品 21.2hr ± 4.9hr
と、大きく変化があるように見えます。
もっとも、従来品の試験は
 ・被試験対象者が5名と、ごく小規模であること
 ・AUCの測定時間が24時間まで、と、短時間での評価であること
 ・2相性の代謝(静注では3相性とも)であるフルニトラゼパムにおいて、α相の半減期であると考えられる
  (変更品の試験におけるT1/2は、おそらく、β相またはα+β合層での半減期と思われます。)
などの諸条件の違いが考えられます。
また、変更品のTmaxにおいて、0.5~6.0hrと、非常に幅があるため、体内動態の個人差が相当大きい薬剤であることも考えられます。
それでも、一般的には、先発品と後発品とを比べる場合、
「ほら!こんなにTmaxもT1/2も違うんじゃ、同じ効き目とは言えないですよね!」
との評価につながってしまう、こともあるのではないでしょうか?
それが、こと、先発品の形状・添加剤変更では「『先発品だから』という理由でスルー」というのは、ちょっと虫がいいなー、とも感じてしまったりもします。
精神科や心療内科などを受診されている患者さんの中には、大変敏感な方もいて
「サイレースでは眠れたのに、ロヒプノールに変えたら眠れなくなった」

「ロヒプノールならすっきり起きられるのに、サイレースでは、明け方いつまでも眠たい」

など(もちろん逆もあり)と訴える方もいらっしゃり、両方を在庫しなければならない場合も多くあります。
(同じく併売の睡眠薬として、「エバミール」(バイエル)、「ロラメット」(あすか/武田)のロラメタゼパムがありますが、こちらは、錠剤の形状も違い、試験も別々に行っていますので、仕方ないかなー、とも思いますが…。)
今回の変更で、
「すっきり眠れるようになったよわーい(嬉しい顔)
という患者さんばかりならありがたいのですが、
「眠れなくなったよexclamation×2前の錠剤に戻して欲しいexclamation×2

という患者さんが、出ないか心配です。
「これまでと同じ先発品ですから、効き目は同じはずですよ」
とお話しても、ジェネリックの説明を逆手にとって
「添加剤や固め方が違うと、効き目が変わることがあるんでしょ?ちっ(怒った顔)
と、切り返されたら、論破されてしまいそうですもんねがく〜(落胆した顔)
この一抹の不安が杞憂に終わることをただただ祈るばかりです…ふらふら
(フルニトラゼパムの後発医薬品も、今後同様に、着色された錠剤に変更が進められていく予定とのことですがく〜(落胆した顔)

コメント

  1. 通りすがりの薬剤師 より:

    大変参考になりました! 興味深いトピックを取り上げて下さりありがとうございます。
    こんなにもTmaxが変化するとは…?と思って早速自分でも添付文書を入手して見比べてみました。
    そしたらこのグラフ、ピーク周辺の採血スポット数が全然違うんですね。
    新剤形では6時間までに8スポット、旧剤形では6時間までに6スポットで、ピーク周辺の採血密度が明らかに違います。
    (横軸の最大値が伸びたので、余計にそう見える部分もあると思いますけれど(^^;))
    実際に添付文書(+旧版の動態データ元論文)とを見比べてみたら、そのあたりの影響もあるんじゃないかと思いました。
    旧版のグラフでは見たところ0.5時間、1時間、2時間…と採血してるので、同じ方法で集計しても中央値が0.75になることは絶対ないですもんね。
    平均±標準誤差 と中央値(最小値-最大値)とを横に並べちゃうと、明らかに違ったように見えちゃいますし…この数値の見た目上の違いが実際に製品間の差異を示しているのか、単にTmax6時間という標本が外れ値なだけなのか、旧製品と新製品の同等性試験資料を公開してほしいです…。
    あともう1点、単純な疑問なんですが、基本的には「消失半減期=化学物質が生体内から代謝・排泄されて消失する速度」で、代謝排泄経路関連の遺伝子多型や化学物質の種類に変化がなければ剤形や添加物が変わっても同一と考えておりました(ほとんどのジェネリックもAUCとCmaxを比較して生物学的同等性を判定しているのはその為だと自分なりに解釈しています)。 今回の値の変動は半減期が記述された相の違いに由来するもので、製剤の変化による影響とはまず考えにくい…と思っていたのですが、違うのでしょうか?

  2. まきのり より:

    通りすがりの薬剤師さん
    いつもコメントありがとうございます(^^)
    お返事が遅くなってスミマセン。
    通りすがりの薬剤師さんのご指摘の通り、血中濃度の測定間隔が違いますし、何より従来品の被験者の数が少なぎるというのが原因の1つになっていると思います。
    従来品との生物学的比較試験の有無について、中外さん(ロシュ品なので、中外が主導で試験しているはず、と勝手に思っています)にでも聞いてみたいと思っています。
    それから、生物学的同等性についてです。
    http://www.pha.fukuoka-u.ac.jp/user/ijohou/web/PDF/kenyaku3.pdf
    この資料がわかりやすいと思います。
    「生物学的同等性」とは「『未変化体又は活性代謝物が体循環血中に入る速度と量』が同一である」ということです。
    ・溶出試験による溶出性の比較により、速度が同等であることを推定
    ・Cmax・AUCの比較により、量が同等であることを推定
    この2つの試験によって、製造販売承認を得ています。
    ただし、今回のサイレース/ロヒプノールは、後発品ではなく、あくまで「製法変更」です。
    厚労省からの通知では「生物学的同等性が確認されており」となっていますが、どの程度の試験かは不明です(溶出試験のみの可能性も?)
    ということで、「半減期(T1/2)」「最高血中濃度到達時間(Tmax)」は、参考パラメータとされています。
    さて、ここで半減期ですが、通りすがりの薬剤師さんのご指摘と同じく「半減期は一定」だと思います。
    ただ、それは静注など、100%BAの薬剤(Tmax ≒ 0)が瞬時に注入されたという条件下での挙動かと思います。
    上記の資料にありますが、溶出挙動の類似性は85%以上ということですので、残りの15%の溶出時間については担保されていないことになります。
    したがって、溶出時間が異なれば、Tmaxにも影響がありますし、T1/2も変化する可能性が考えられます。
    今回のフルニトラゼパムの後発品についても、
    (フルニトラゼパム錠「SN」添付文書より)
    http://www.info.pmda.go.jp/go/pack/1124008F1067_1_09/1124008F1067_1_09?view=body
    フルニトラゼパム錠1mg「SN」 (2錠):1/2(hr)
    β相 19.3±14.5
    標準製剤 (錠剤、1mg、2錠):1/2(hr)
    β相 15.3±7.1
    と、バラつきが大きくかつ、延長傾向にあるようです。
    これが、本当に添加剤等による製剤の差なのか、バルク(原料)の純度による差なのか、単に被験者の体調等による差なのか、ボクには分かりません。
    しかし、ボクたち薬剤師が、通常業務を通じて、この辺りまでの情報にしかアクセスできないにも関わらず「生物学的同等性が担保されている後発品を自信を持ってチョイスしています」と言わなければならない、という現状は、なんとか打開していきたい、と感じます。
    ところで、今回このコメントを書くにあたって気づいたのですが、サイレース/ロヒプノールの後発品は現在、
    ・ビビットエース(辰巳)
    ・フルニトラゼパム錠「TCK」(辰巳)
    ・フルニトラゼパム錠「アメル」(共和)
    ・フルニトラゼパム錠「JG」(日本ジェネリック)
    ・フルニトラゼパム錠1mg「SN」(シオノ)
    の5種類(ビビットエース→「TCK」に名称変更中なので、実質は4種類)なのですが、これらの添付文書の体内動態は、まったく同一でした。
    つまり、これらの5種類は、製造元が同一であるということなんですね!
    「後発品についても準備が整い次第、同様の製剤が供給される見込み」と厚労省からの通知に記載がありましたが、製造元が1つだったら、それほど混乱は大きくないのかもしれませんね!

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