SGLT2阻害薬(2)SGLT2選択性は高い方がいいのか?

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前回の「SGLT2阻害薬(1)1番売れてる薬剤は?」から続いて、今回はすでに使い古されたテーマ「SGLT1:SGLT2阻害の選択性は、高い方が良いのか?低い方が良いのか?」でお送りしたいと思います。
もう高名な先生方がいろんな論文を出されたり、解説を出されているので、「そんなの知ってるよん」という方や「お前の話しなんか2番煎じどころか、番茶以下だわ!」という方は、読むのを止めてくださいあせあせ(飛び散る汗)

●SGLTの分布とサブタイプ

さて、まず話題になるところの「SGLT1」と「SGLT2」の差についておさらいなのですが、現在、SGLTについては6種類のサブタイプが判明しています。
・SGLT1:小腸でのグルコース・ガラクトースの吸収
      腎臓でのグルコース再吸収(約10%)
      心筋での糖吸収
      骨格筋での糖吸収
      脳での糖吸収
・SGLT2:腎臓でのグルコース再吸収(約90%)
・SGLT3:小腸、骨格筋
・SGLT4:小腸、肝、腎、胃、肺
・SGLT5:腎
・SGLT6:腎、脳、脊髄、小腸
このうち、腎臓での糖の再吸収に関わるSGLTが、SGLT1とSGLT2になります。

●各薬剤のSGLT2選択性

それでは各薬剤のSGLT1:SGLT2の比率を見ていきますと、
・トホグリフロジン(アプルウェイ/デベルザ):2,900
・ルセオグリフロジン(ルセフィ):1,600
・エンパグリフロジン(ジャディアンス):1,100
・イプラグリフロジン(スーグラ):860
・ダパグリフロジン(フォシーガ):610
・カナグリフロジン(カナグル):290
  (Suzuki M, et al.: J Pharmacol Exp Ther. 2012; 341: 692-701)
となっていまして、(数字が大きい方が、SGLT2選択性が高い)アプルウェイ/デベルザが最も高く、カナグルが最も低い、というのが現状になっています。
これは、50%阻害率濃度(IC50)の比率となっており、各社の公表値による結果ではズレがあります。
もともと、ジャディアンスの発売時には「現行SGLT2阻害薬の中でもっともSGLT2選択性が高い」というのがウリ文句だったかと記憶しています。
実際に、各薬剤のインタビューフォームを元にすると
・ジャディアンス:5,000
・アプルウェイ/デベルザ:2,900
・ルセフィ:1,283
と、順位が入れ替わってしまいます。
あくまで、おおまかな傾向として捉えたほうが良いのかもしれません。

●SGLT2阻害時のSGLT1の代償性機能亢進

上記のSGLTの作用で触れたように、もともと腎でのグルコース再吸収はSGLT2が約90%を担っており、SGLT1は残りの10%を再吸収しています。
1日の腎臓でのグルコースの濾過量は約180gと言われ、SGLT2は160g程度、SGLT1は20g程度を再吸収し、ほぼ100%のグルコースを再吸収しています。
ここへSGLT2阻害薬を投与した場合、SGLT2阻害薬によるSGLT2阻害率は50%~70%と言われて
いるため、60g~90gが尿中へ排泄される計算となります。しかし、実際は健常人での尿糖排泄量は40~50g程度となっています。
これは、SGLT2が阻害されたことで、尿中グルコース濃度が上昇し、相対的にSGLT1が活性化して尿糖の再吸収が亢進する、と考えられています。

●SGLT1への選択性はあった方が良いのか?

では、本題です。結論からです。
SGLT1への作用が強い(SGLT2への選択性が低い)ほど、血糖降下作用は高くなると考えられます。
しかし、SGLT1は小腸・心筋・骨格筋・脳などにも広く分布するため、SGLT1への阻害作用が強くなると、それらの臓器での副作用が表れない、とも限りません。
現在のところ、もっともSGLT2選択性の低いカナグルにおいても、そうした特異的な副作用はおきていないようですので、300倍程度以上の選択性があれば、特に気にすることはないかと考えられています。
ちなみに、カナグル以外のSGLT2阻害薬は、添付文書の薬効分類に「選択的SGLT2阻害薬」と記載していますが、カナグルだけは「SGLT2阻害薬」としか表記がありません
もともとSGLT1のパーシャル・インヒビターであること、が田辺三菱の狙いであることが分かりますね。

●SGLT2への選択性は高い方が良いのか?

こんどは、逆にSGLT2への選択性を高めるメリットを考えてみます。
広く知らていると思いますが、もともとSGLT2阻害薬は、林檎の木の皮に含まれるフロリジンという物質からスタートしてきました。
フロリジンでは、SGLT1・SGLT2とも阻害する作用(SGLT1:2 11…カナグルの約30倍)が強く、特にSGLT1への阻害作用による下痢などの消化器症状の副作用や、低血糖などがネックになっていたと言われています。
つまり、「SGLT1を阻害することによって起こる副作用を減らすために、SGLT2の選択性を高めてきたんだから、SGLT2選択性が高いほうがいいに決まっている!」と、おっしゃる先生が多いようですあせあせ(飛び散る汗)
それが是か非かはここでは敢えて触れないようにしたいと思いますたらーっ(汗)
しかし、上にもあるように、SGLTは1/2だけでなく1~6までの6種類があり、当然、それぞれの薬剤のそれぞれのSGLTへの親和性が異なってきます。
SGLT1と同じく脳に存在するSGLT6などへの親和性が低くない薬剤(カナグル、ルセフィなど)は、今後、長期服用に伴い、いろいろな影響が表れる可能性もゼロではないと言えるかもしれません。

●Ⅰ型糖尿病へ;SGLT1/SGLT2デュアルインヒビター

最後に少し今後の展望を。
現在、米・レキシコン社では、Sotagliflozin(ソタグリフロジン、LX4211)というSGLT1/SGLT2のデュアル阻害薬を開発中(米国・欧州にてフェーズⅢ)です。
このソタグリフロジンは、1型糖尿病、2型糖尿病の両方の適応取得を目指しています。
SGLT1を阻害して小腸での等の吸収を抑制しつつ、SGLT2阻害作用による尿糖再吸収抑制で、1型糖尿病の症状改善作用が期待できるとのことです。
現在のSGLT2阻害薬は「1型糖尿病の患者には投与をしないこと」と記載されています。
1型糖尿病の治療が、インスリン以外の内服薬で出来るかもしれない(あくまでインスリンの補助でしょうが)、というのは、とても大きなニュースだと思います!
SGLT1・SGLT2阻害作用による体重減少効果も大きなメリットだと思います。
順調にいけば、2~3年後には日本での使用も可能になるかもしれませんね。

コメント

  1. EMPA-REGセンセーション!

    17日の欧州糖尿病学会(EASD 2015、ストックホルム、9月14~18日)で、メインイベントとも言われた「EMPA-REG OUTCOME試験」の結果報告がされ、一大センセーションとなりました。 EMPA-REG OUTCOME試験は、SGLT2阻害薬・ジャディアンス(エンパグリフロジン、ベーリンガー…

  2. ちょっちゃん より:

    選択性の少ないカナグルを服用した50代の患者 服用翌日から、頭重感 集中力の持続困難 易疲労感(肉体労働ですぐに疲れる 休みたくなる) それらの症状は、キャンディーを舐めると回復すると・・・・ 低血糖ではなかった? 
    血糖は下がっていないが、-1の阻害により組織への移行が減りブドウ糖が利用できなくなった可能性を考えている  

  3. まきのり より:

    ちょっちゃんさん
    コメントありがとうございます。
    医師でしょうか?薬剤師でしょうか?
    いずれにしても、気になる患者様の症状ですね。
    SGLT1は小腸と腎臓に主に分布していますが、心筋・骨格筋でのグルコースの取り込みや、脳へのグルコース輸送という働きもあると言われています。
    キャンディなど糖分を摂ると回復するということは、低血糖の可能性もありますが、血糖値が下がっていないのに、そうした症状が出ているのであれば、よっちゃんさんがご指摘の通り、SGTL1阻害によるグルコースの組織への輸送が低下してしまっている可能性も十分考えられると思います。
    例えば、よりSGLT2の選択性の高い、トホグリフロジン(アプルウェイ/デベルザ)や、エンパグリフロジン(ジャディアンス)へ切り替えて症状が改善するなら、ちょっちゃんさんの仮説はより可能性が高くなりますのね。(その患者さんでSGLT2阻害薬の治療を続けるか否かは、倫理的な問題はあるかもですが…)
    いずれにしても、興味のある情報、ありがとうございました。